ジョニー

モクジ
「早く行こう、ジョニー」
「待て待て、そんなに慌てるなよハニー。俺にも準備というものがあるからな」
 俺の愛しのマドンナ、リリカは元気良く玄関を飛び出す。全く可愛いやつだな、さすが俺のハニーだ。
 街に繰り出した俺たちが暫く歩道を歩いていると、向こうからやって来たのは金髪の美しいジュリアである。すれ違う野郎どもを軒並みノックアウトさせる、ナイスバディのドイツ系クウォーターだ。
「あらジョニー、お久しぶりね」
「やあジュリア、相変わらず君はいつ見ても美しいな」
「まあ、ありがと」
 そう微笑むと彼女は微かな芳香を残してその場を去って行く。ついついその後ろ姿を眺めていると、きつい口調の声が俺に投げかけられた。
「何してるの、ジョニー」
 おおっと、いけないいけない。俺は今ハニーとのデート中だったんだ。そんなに可愛い顔をしかめたら台無しだぜ、リリカ。
「俺が大事なのはお前だけだよ、バカなやつだな」
「全く、もう」
 俺が顔を寄せると、リリカは一息ついただけでまた歩き出した。俺のハニーはやきもちの上に照れ屋なのだ。
 今日は少し足を伸ばして新しい風景の場所へ踏み出す。晴れた空、新鮮な空気。俺はこれ以上無いほどのご機嫌で意気揚々と進んでゆく。
 そして俺はすれ違ってしまった。あいつに。
「よう、元気そうじゃねえか。ジョニー」
「お前こそ、よくそのしけた面見せられたもんだな。俺に負けた時の傷はもう治ったのかよ」
 そいつは俺より少し大柄で、いかつい風体をしたここいらのボスだった男だ。身の程知らずにも勝負を挑んで来やがったので、返り討ちにしてやったがな。
「けっ、何だよお前の連れてる女。貧弱な体つきしやがって」
「お前、今何て言いやがった」
 俺のハニーを侮辱しやがったな、このクソ野郎が。
「ちょっと、ジョニーってば」
「止めるなリリカ、俺はこいつに俺たちの愛の鉄拳を食らわしてやらないと気がすまねえ」
 止めようと引っ張るリリカに、俺はそう言いながら振り向いた。その時。
「いい加減にしなさいっ」
 脳天に響き渡る稲妻のような衝撃。リリカの張り手が、唸りを上げて俺の後頭部に振り下ろされたのだ。
「全くあんたは。こないだも家出して心配してたら傷だらけで帰ってくるし、散歩に出れば雌犬にホイホイついて行くは、雄犬にケンカふっかけるは。いい加減にしないとご飯抜きよ!」
「きゅーん」
 酷いぜリリカ。俺は、俺は男としてだなあ……
「何か文句あるの?」
 俺は耳を伏せ、尻尾を垂らして溜め息をつく。
 愛しのハニーの言葉には逆らえない。これが惚れた弱みってやつだよな。
 男はつらいぜ。
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